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HOME > 実践編 > 夏越しの方法
地植えと比べると、鉢植え、特にベランダでの夏越しはなかなか植物にとってハードです。
冬越しよりも夏越しのほうが難しい場合すらあります。
今回は猛暑で有名な関東内陸部、しかも南側の2階ベランダでの夏越しを念頭に対策します。

【夏越しについて】 暑さで枯らさないために

ベランダでの夏越しの難しさは、独特の高温に見舞われるところにあります。 ベランダ自身が熱を持ち、照り返しや室外機の排気が来やすいことも原因ですが、 意外と手軽な方法で乗り切れますのでポイントを解説します。


夏越しというとやはり猛暑の7月あたりから9月頭までを想定しがちですが、意外と見落としやすいのが春先の突発的な暑さです。
この時期に苗の体力を落としてしまうと、夏に枯れやすくなります。
そのため、夏の暑さ対策は4月の終わりには始めておいたほうが良いでしょう。

【夏越しの方法】夏の暑さへの対策

ここでは日本でも有数の猛暑となる北関東平野部での経験をもとにし、ベランダやバルコニーでの夏越しの方法を紹介していきます。
鉢植えを前提とし、全面に日が当たる二階の南向きベランダでの方法となります。


【地面との間に隙間を作る】

ベランダ特有の問題に、床面が暑くなるという点があります。
照り返しとも連動する問題なので、まずは床面の温度対策が必要になります。
また、ベランダ特有の蒸れを軽減するためにも地面との間に隙間が必要になります。


ベランダの夏対策1 床にウッドパネルを敷く パネルの表面・裏面ともに隙間・空間があるものをえらぶこと。


床の温度対策で一番簡単なのはウッドパネルを敷くことです。
最近はデザイン性重視で板に隙間がないおしゃれなタイプが主流ですが、【隙間があるタイプ】を選んでください。
蒸れ対策や鉢底の余分な水分を逃がすためには隙間が必要です。

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パネルは裏面にも空間を確保できるものを選びます。
これで床からの熱をある程度遮断できますし、鉢底の通風を確保することで蒸れた湿気や余計な熱を逃がすこともできます。


ウッドパネルがなければすのこでも良いでしょう。
余談ですが、ヒノキはお風呂にも使われるほど水に強いので、植木鉢の水やりで濡れることを考えるとヒノキのすのこは意外と適しています。
ヒノキは押し入れ用のすのこと思われがちですが、虫にも強く頑丈で重いため、屋外用にも向いています。


このタイプのウッドパネルだけで夏越しの成功率は全然違います。
また、春先の突発的な高温や梅雨時の蒸れにも対応できるため、春になったらまずウッドパネルの設置をしておくと良いです。

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【壁面(背面)の照り返しを防ぐ】

床面からの照り返し対策はウッドパネルを敷いたりシートを敷いたりといった対策がとられることが多いのですが、 意外と見落とされているのが横から、つまり壁面からの照り返し対策です。
特に雨戸がある場合は金属製の戸袋が熱を持つため、壁面の対策は忘れないようにしたいものです。


ベランダの夏対策2 壁面にすだれを取り付ける よしずでも何でも良いが、植物性の素材が良い。
鉢植えの背後にあたる壁面の温度を上昇させないのがポイント。


平らなシート状のものよりは、隙間があって素材自体が通風によって温度を持ちにくいものが良いです。
すだれやよしずなどを鉢植えの背後の壁面に取り付ける(貼り付ける)と良いでしょう。
稀に樹脂製のものがありますが、蒸れにくい植物性のものにします。
和風な見た目が苦手な場合は洋風のラティスなどを挟むのも良いです。


壁面からの照り返し対策なので、設置するのが鉢植えの背後というのがポイントです。
鉢植えよりも前面にしてしまうと葉焼けなどの日差し対策にはなりますが、半日陰を好むミントやワイルドストロベリーはともかく、 タイムやローズマリーは強い日光を必要とするのであまり好ましくありません。


【ガーデンラックを使う】

地面からの照り返しや蒸れた熱い空気の対策には、ガーデンラック(棚)を使うと良いです。
中でも棚板がないも同然なアイアンラックが最適。
ガーデン用のアイアンラックというとおしゃれアイテムのようなイメージが強いですが、 夏にはとても強力なアイテムです。


ベランダの夏対策3 アイアンラックを使う 棚面を見ての通り、棚板などないも同然。
通風という面では最強。


通風という面では最強で、鉢底の蒸れを防ぐことができますし、鉢そのものの温度が上がることも防げます。
熱を逃がすためには通風は重要です。
床面からの照り返しは受けますが、高さ(距離)があるため、それほどの影響はありません。
通風と排水の利点を生かすため、鉢受け皿は使わないようにします。


アイアン製ガーデンラックの良いところは他にもあります。
見た目に反して重さがあるため頑丈で、通風の良さも相まって強風で煽られて倒れることもないでしょう。
金属製のためラック本体は熱を持ちますが、鉢と接する面積が極端に少ないので鉢の温度を上げてしまうような心配はいりません。
木や樹脂と比べ、強い日光に長時間当たっても劣化しにくいのもポイントです。


【対策を組み合わせる】

関東内陸部ではベランダが40度に達するような過酷な暑さになるため、一つだけでの対処では夏を乗り切れない可能性が高くなります。
そのため、いくつかの方策を組み合わせたほうが良いでしょう。


ベランダの夏対策4 床+壁+棚 床や壁面からの熱対策の組み合わせ。
日光に弱い植物以外はこれで何とかなる。


こちらは床面にウッドパネルを敷き、壁面にすだれを張り付け、ウッドパネルの上にアイアンラックを置いた状態です。
鉢底や背面からの熱や照り返し対策になります。
ハーブは強い日光を好むものが多いため、熱対策だけで何とかなるものも多いです。


北関東というと涼しいイメージがあるかと思いますが、真夏は日本一過酷ともいわれます。
夏を迎える前の時点で多少の暑さ対策をしておいた方が無難です。
春先の突発的な暑さでダメになる植物も多く、4月も半ばになったら暑さ対策の第一段階として、 ウッドパネルを敷いておくくらいはしておいたほうが良いです。
隙間のあるウッドパネルは排水性も高いため、その後の梅雨の時期にも活躍してくれます。


【ベランダ本体の照り返し対策】

ここまでは鉢植え周辺の温度対策をしてきましたが、 そもそもベランダ自体が暑くなければよいわけです。 ベランダ本体の地温を上げないような工夫をしてみます。


ベランダの夏対策5 床面に日が当たらないようにする 手すり一面にすだれを取り付けた。
風通しも良く、少しは風景も透けて見える。


そもそもベランダの床面に日光が当たらなければ床面の地温の上昇は抑えられます。
最近流行りのオーニングやルーフでも良いのですが、完全な日陰にしてしまうとタイムやローズマリーといったハーブには光が足りません。
同じ理由で遮光シートや黒の寒冷紗も考え物です。


すだれやよしずは隙間から木漏れ日のように光が入りますので、日光不足の危険性は低くなります。
市販の園芸用シートでは白の防虫ネットや白で薄手の寒冷紗が良いでしょう。


すだれの設置方法ですが、軒から吊るすと風で煽られて網戸などに傷がつく場合がありますので、固定式のほうが良いでしょう。
よしずに至っては立てかけてあるだけなので強風には弱いです。必ず固定しましょう。
地温の上昇を防ぎたい場合は床面だけ直射日光を防げればよいのですだれは低い位置で良く、手すりに固定してしまうのが手っ取り早いです。


植物を使ったグリーンカーテンも良いです。
ただし、台風などが多い地域ではグリーンカーテン自体が凶器になる場合があるため、撤去しやすくするか、大きな実がならないものにするなど工夫が必要になります。


【ベランダの環境が悪い場合】

おしゃれな家やマンションのベランダ・バルコニーでは、ベランダの手すりがなく、壁になっているものも多いです。
この場合、床に日があたりにくく、さらに通風も悪く熱気がこもりやすくなります。
床に直接植木鉢を置いている場合は蒸れやすくなりますので対策が必要です。


ベランダの壁に通風用の小窓やスリットがあるタイプも存在しますが、小窓が上部に設置してあったり、 塞いでしまっているお宅も見受けられます。
蒸れた空気を逃がすには、小窓やスリットが床に接しているほうが適しています。塞いでいる場合は開放しましょう。


このようなベランダで育てる場合、植木鉢を直接床に置くことは避け、鉢の位置を高くすることで通気性を確保します。
隙間のあるウッドパネルを敷いたうえで、ガーデンラックや棚に乗せるか、ない場合はレンガの上にすのこを渡して通気性を確保します。
植木鉢もぎっしり並べず、間隔をとります。


ベランダに空調の室外機がある場合は、排気の風に直接当たらないように注意します。
ベランダの壁に当たって意外な方向から排気が回ってくることもありますので、確かめてから鉢の配置を考えましょう。


どうしても通風が確保できず植物が枯れてしまう場合は、夏場の昼間だけ扇風機やサーキュレーターを使うことも考慮します。


【夏枯れ対策】要因別の対策

【温度や日差しの対策】

夏越しで基本となるのが温度と日差し、蒸れの対策です。
日差しを遮ることで温度も下がりますので、まずはここをしっかり押さえておきましょう。


日差しを遮るにはシートやすだれなどを活用します。
遮光シートもありますが、あまりにも光を遮ってしまうと植物の芽や柔らかい茎が徒長してしまいますので、 ある程度の明るさは必要となります。
シートを使う場合は白の寒冷紗や、やはり白で薄い不織布が良いでしょう。
黒の寒冷紗ではやや光が不足してきます。


シートで被う時に隙間なく覆ってしまうと通風が悪くなり、高温多湿で蒸れてしまいますので、 あくまでシートの設置は日差しを避ける側だけで良いでしょう。
反対側は開けておいたほうが無難です。


オーニングやルーフは、ほとんどの場合は室内への直射日光を遮るように作られているため、 ベランダの床面には日が当たってしまう場合がほとんどです。
どちらかというと、床面への日照を防ぐように工夫しましょう。


鉢植えでしたら半日陰・木陰などに移動させるのも一つの方法です。
この場合もあまり長時間光を遮ると徒長してきますので、真昼の一番暑い時間だけ日陰になるように場所を調整しましょう。
日陰を作るような庭木がない場合は、暑さに強くやや大きめの植物が植わった植木鉢を南側に配置、 その陰に小さい鉢や暑さにやや弱い鉢を置くと良いでしょう。


【熱風や水分、蒸れの対策】

熱風は地面や壁で熱せられた空気が流れてきたり、場合によってはクーラーの室外機の排気が流れてきたりすることで生じます。


地表付近の熱い空気に関しては照り返し対策に含まれますが、まずは地表から引き離すことが必要となります。
地面に直接植木鉢やプランターを置くのではなく、すのこやウッドパネルなどの上に置くことで地面からの熱と距離を置きます。
可能であればフラワースタンドやガーデンラックに移動させるとより良いです。
高さを稼ぐだけであればレンガやブロックでも良いですが、それらは熱も保持しやすいため、木製のもののほうが良いでしょう。
鉢底の通風を考えるとアイアンラックも良いでしょう。
すのこ状のウッドボックスを置いてその上に乗せるのも良い方法です。
とにかく鉢の下を空気が通るようにしてください。


水分は空中の水分(湿気や水蒸気)と土の水分があります。
空中の水分に関しては、植物の枝や葉を透かし、通風を良くすることで蒸れを防ぎ、植物の温度を下げます。
土の水分は根が蒸れたり茹ったりしてしまう原因になります。
樹脂製の植木鉢やビニールポットなどは通気性が悪く、内部が蒸れやすくなりますので、 可能であれば気温が上がる季節の前に通気性の良い素焼きの植木鉢へ植え替えておきましょう。


また、水切れを心配するあまり鉢受け皿に水をためておくのもおすすめできません。
真夏ではあっという間にお湯に変化してしまい、根を傷める原因になります。
蚊も発生するのでやめておきましょう。
水切れが心配な場合は大きめの素焼き目の植木鉢に植え付け、朝早い時間にたっぷりの水を与えるようにします。
鉢植えの場合、土の量が多いほど水切れの可能性は低くなります。


【照り返しの対策】

日差しや温度対策と共に気になるのが照り返しへの対策です。
地面がアスファルトやコンクリートの場合はもちろん、意外と見落としがちなのが壁からの照り返しです。


地面からの照り返しは、植木鉢やプランターを直接地面に置かないことである程度軽減されます。
また、すだれや各種シートで地面への日差しを避けることで地温の上昇も軽減できます。


地面に関してはすのこやウッドパネル、すのこ状のウッドボックスなどを置き、その上に鉢を置くようにします。
防草シートなどでも多少の軽減はできます。
徹底して行うならば、地面に防草シートを敷いてその上にすのこかウッドパネルを敷き詰め、その上にアイアンラックを置き、 そこへ鉢を並べるようにします。
照り返しは地面からの距離(高さ)があるほど効果があります。


壁からの照り返し対策は、壁と鉢の間にすだれやよしず、ラティスなどを挟んで軽減します。
棚などに植木鉢を置いている場合は壁際に設置することが多くなるので忘れずに行いましょう。
特に金属製の戸袋(雨戸の収納部分)は高温となりますので、すだれなどで日差しを遮りつつ、反射・輻射熱も防ぎましょう。


【害虫対策】

夏にかけて活発に活動するのがハダニとアブラムシ、ヨコバイ、アザミウマ、コナジラミなどの特に小さい虫です。
これらは乾燥することで余計に活発に繁殖します。
乾燥を防ぐことで発生の軽減を図ることができます。


気温にもよりますが大体4月ごろから発生し始め、5月あたりから被害が目立つようになります。
真夏も活動し、さすがに40度近くなるとやや動きは鈍くなりますが、暑い季節を好みます。
予防は春先のうちに始めておきましょう。


基本は植物自体を乾燥させないことで、葉水をかけることが対策となります。
特に新芽や葉の裏は念入りに濡らしてください。だいたい葉の裏から発生が始まります。
室内の場合は霧吹きで、屋外であれば水やりついでにシャワージョウロでざぶざぶと水をかけてしまいましょう。


【暑さに弱い植物はどうする?】

頑丈とされるハーブですが中には暑さに弱いものや日本の夏が適さないものもあります。
このような植物はより念入りに夏越し対策を行います。
特に鉢植えはいきなり枯れることが多いので注意が必要となります。
春のうちにウッドパネルを敷くなど早めに手を打っておきます。

暑さに弱い植物については解説ページがありますのでご覧ください。
《関連記事》 要注意:夏に弱いハーブ


鉢植えの場合、可能であれば暑くなる前に素焼きの植木鉢へ植え替えておきます。
気温が上がってきたら、半日陰や昼間一時的に日陰になるような場所へ移動させます。
そのような場所がない場合はすだれや白の寒冷紗などで日差しをやわらげます。
地面に植木鉢を直接おかず、すのこやウッドパネルなどの上に置きます。
天気予報でいきなり気温が上がる予想が出たら、前日の夕方のうちに涼しい場所へ移動させておきましょう。


日差しや温度、照り返しの対策を組み合わせて施しますが、 どうしても高温が苦手な種類の植物という場合は冷房の効いた室内への退避も検討します。
遮光は網戸やガラス戸で十分なので、窓際で午前中に日が当たり、昼過ぎには日が陰る場所が良いでしょう。
気温が上がりすぎないよう、また湿気がこもらないように窓は隙間風が入るように少し開けておきます。
クーラーを使用する場合は風が直接当たらない場所にしてください。


【夏越し対策】夏越しの必需品

【夏越しに準備すると良いもの】

夏の日差し対策にあると重宝するものをいくつか挙げてみましょう。

【シート類】 まずは日差し対策に遮光用のシートが挙げられます。
遮光シートとして売られているものでは光を遮断しすぎてしまうため、白の寒冷紗や、同じく白色で薄いタイプの不織布が良いでしょう。
他のシートで代用する場合は、通風を確保して蒸れないように注意します。
また、シートを留めるための留め具(クリップや洗濯ばさみなどでもOK)、 支柱なども設置形態によっては必要となりますので一緒に用意しておきましょう。
シート類については下記のページに詳しい解説があります。
《 関連記事 》 季節対策:夏越し・冬越しの必需品 > シート類


【植木鉢】 鉢植えの場合、樹脂製の鉢やビニールポットに植わっていると熱が伝わりやすく、土の内部がかなり高温になります。
また通気性も悪く、根が蒸れてしまうこともあります。
そのため、可能であればあらかじめ通気性の良い素焼きの植木鉢へ植え替えておくと良いでしょう。
この時、通常よりもやや大きめの鉢へ植え付けると土の量も多いため、水切れの可能性を軽減できます。
鉢底が蒸れるのを防ぐため、鉢受け皿は使わないほうが良いでしょう。


【ウッドパネル】 植木鉢やプランターの下にウッドパネルを敷くことで、地面からの熱を軽減することができます。
この時にウッドパネルは板同士および底面(裏面)に隙間・空間があるものを選ぶようにしてください。
鉢裏に通風の空間を設けることで温度を下げ、蒸れを予防することにもつながります。
ウッドパネルがなければ『すのこ』でも良いですが、その場合は水に強いヒノキか、そうでなければ防水塗料を塗るなどして劣化を予防しましょう。

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【ウッドボックス】 格子状・すのこ状の板でできているウッドボックスも活用できます。
この場合、ボックスの中に入れるのではなく、ボックスを置き、その上に鉢を置きます。
ウッドパネルより高さ(地面からの距離)を稼ぐことで、照り返しの軽減になります。



【ガーデンラック】 照り返し対策や地面からの距離(高さ)を確保するという面で、鉢をガーデンラックに置くのはとても良い方法です。
この時に鉢の底面が蒸れないよう、棚板に隙間があるもの・格子状になっているものが良いでしょう。
ラックは支柱にストッパーのみで棚板をセッティングするスタンドタイプは鉢の重さに耐えきれないことがあるため、 鉢が大型化しがちな屋外用にはあまりお勧めしません。
通常の棚型のものが良いでしょう。
棚板がないにも等しいアイアンラックは金属部分が熱くはなるものの、通風・排水という面で非常に優れているため夏には適しています。
見た目もおしゃれなので良いでしょう。
《 関連記事 》 季節対策:夏越し・冬越しの必需品 > ガーデンラック(夏越し用)  


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